在宅介護の褥瘡(床ずれ)予防|体位変換・マットレス・スキンケアの基本

介護士が横向きに寝た高齢者の背中にクッションを当てて体位変換するイラスト 在宅介護

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褥瘡(じょくそう)、いわゆる「床ずれ」は、寝たきりや座りきりの時間が長い方に起こりやすい皮膚のトラブルです。一度できると治るまでに時間がかかり、痛みや感染のリスクも高まるため、家族介護では「できてから対処する」より「できないように予防する」ことが何より大切です。ここでは、在宅介護で実践できる予防の基本を、体位変換・マットレス・スキンケア・栄養の4つの柱で整理します。皮膚に赤みや傷があるときは自己判断せず、主治医や訪問看護師に相談してください。

褥瘡ができやすい体の部位をハイライトした図解イラスト

褥瘡はなぜできる?原因は「圧迫」「ずれ」「湿り気」

褥瘡は、体の一か所に圧力がかかり続け、皮膚やその下の組織に血が届かなくなることで起こります。ポイントは3つです。

  • 圧迫:同じ場所が長時間押されると、血流が悪くなる
  • ずれ・摩擦:ベッドの背上げや体の引きずりで、皮膚が引っ張られる。とくに背上げ後に体が足元へずり落ちるときに、仙骨(お尻の上部)周辺に強いずれが生じやすい
  • 湿り気:汗や尿・便で皮膚がふやけ、傷つきやすくなる

さらに、栄養状態の低下や、皮膚の乾燥・むくみ、感覚の低下で痛みに気づきにくいことも、リスクを高めます。

できやすい部位と、初期のサイン

骨が出っ張っていて、皮膚のすぐ下に骨がある場所が、できやすい部位です。仰向けなら後頭部・肩甲骨・仙骨部・かかと、横向きなら耳・肩・大転子(太ももの付け根の骨の出っ張り)・くるぶしなどです。座っている時間が長い方は、坐骨(お尻の骨)周辺にも注意します。

初期のサインは「皮膚の赤み」です。赤くなった部分を指で軽く押して、白く変わらずに赤みが残る場合は、圧迫による皮膚の傷みが始まっている可能性があります。この段階で圧迫を取り除けば、悪化を防げることがあります。水ぶくれや皮がむけた状態、傷になっているときは、早めに主治医や訪問看護師に連絡してください。

予防の柱①:体位変換

同じ姿勢が続かないよう、時間を決めて体の向きを変えます。間隔は体の状態やマットレスの種類によって変わるため、医師や訪問看護師、ケアマネジャーに確認して決めます。

  • 横向きは、真横(90度)ではなく、やや斜め(30度前後)に傾けると、大転子部への圧が減らせます。背中や腰の下にクッションや枕を入れて姿勢を支えます
  • かかとは床ずれができやすいため、ふくらはぎの下にクッションを入れて、かかとを浮かせる(圧を逃がす)方法があります
  • 体を動かすときは、持ち上げるか、シーツやスライディングシートを使って、引きずらないようにします。摩擦とずれを減らすためです

予防の柱②:マットレス・ベッドの使い方

体圧分散マットレス(体にかかる圧力を分散するマットレス)は、褥瘡予防の重要な道具です。エアマットレス(空気の力で圧を変える)、ウレタンフォームのマットレスなど、さまざまなタイプがあり、本人の状態(寝返りができるか、皮膚の状態、体重)で適したものが変わります。選び方は 介護ベッド用マットレスの選び方は?床ずれ予防と寝返りやすさのバランス で解説しています。

あわせて意識したいのが、ベッドの背上げの使い方です。背上げをすると、体がずれ落ちやすく、お尻や背中に強いずれが生じます。背上げをしたあとに、「背抜き(背中とマットレスの間の圧を抜く)」を行うと、皮膚への引っ張りを減らせます。電動ベッドの正しい使い方は 介護ベッドの電動リクライニング機能の正しい使い方と注意点 も参考にしてください。

予防の柱③:スキンケアと清潔

  • 汗や尿・便で汚れたら、早めに拭き取り、皮膚を清潔で乾いた状態に保つ
  • ゴシゴシこすらず、やさしく拭く。マッサージは、赤い部分を強くもむと逆に皮膚を傷めるため、基本的には避ける
  • 皮膚が乾燥しやすい方は、保湿剤の使い方を訪問看護師などに確認する
  • おむつやシーツのしわ、衣服の縫い目が肌に当たらないよう整える

予防の柱④:栄養と水分

タンパク質やエネルギーが足りないと、皮膚の回復力が落ち、褥瘡のリスクが高まります。食事量が減ってきた、体重が減ってきた、という変化があれば、医師や管理栄養士、ケアマネジャーに相談してください。食べにくさの背景に、飲み込みの問題(むせ・食事に時間がかかる)があることもあります。

在宅で頼れるサービス

  • 訪問看護:皮膚の状態のチェック、処置、家族へのケアの指導
  • 訪問介護:体位変換や清拭(体を拭くこと)の支援
  • 福祉用具貸与:体圧分散マットレス、褥瘡予防のクッション、介護ベッドのレンタル
  • 訪問リハビリ:寝返りや姿勢の保持など、動きの面からの支援

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【現場の視点】褥瘡予防は「体位変換の回数」だけでは足りない

褥瘡予防というと体位変換の頻度に目が向きがちですが、理学療法士の視点では、どんな姿勢で、どこに圧がかかっているかも同じくらい大切です。横向きの角度が大きすぎて大転子に体重が集中していたり、背上げのあとに体がずり落ちて仙骨部にずれの力がかかっていたりすると、回数を増やしても十分な予防にならないことがあります。

ご家族には、体位変換のあとに「クッションで体が支えられているか」「かかとが浮いているか」「背抜きをしたか」を確認する習慣をおすすめします。皮膚の赤みに気づいたらすぐ圧迫を取り除き、指で押しても消えないときは、早めに医師や訪問看護師に相談してください。ケアの方法は本人の状態で変わるため、専門職と一緒に確認しながら進めましょう。

よくある質問

Q. 体位変換は何時間おきに行えばよいですか?

A. 一律の正解はなく、本人の状態や使っているマットレスの種類で変わります。夜間の頻度も含めて、医師・訪問看護師・ケアマネジャーと相談して決め、無理のない方法を続けることが大切です。

Q. 赤くなった部分をマッサージしてもよいですか?

A. 赤みのある部分を強くこすったり、もんだりすることは避けてください。皮膚を傷めて悪化する恐れがあります。まずは圧迫を取り除き、様子を見て、改善しない場合は受診してください。

Q. ドーナツ型のクッションは有効ですか?

A. リング状のクッションは、周囲に圧が集中して逆効果になることがあると指摘されています。使う場合は、専門職に確認したうえで、体圧分散に適したクッションを選んでください。

制度の詳細や最新の情報は、厚生労働省「介護・高齢者福祉」、テクノエイド協会などの公的機関の情報もあわせてご確認ください。

まとめ:在宅介護での褥瘡予防の要点

褥瘡予防の基本は、圧迫・ずれ・湿り気を減らすことです。体位変換、体圧分散マットレス、スキンケア、栄養の4つの柱を組み合わせ、背上げ後の背抜きなど「ずれ」を減らす工夫も取り入れましょう。赤みが引かない、皮膚に傷ができた、というときは自己判断せず、早めに主治医や訪問看護師に相談してください。

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この記事を書いた人

脇本竜次
総合病院にて理学療法士として五年間勤務したのち、整体院を開業し七年間経営。さらに介護の現場でも三年の実務経験を持つ。保有資格は理学療法士。医療・リハビリと介護、両方の現場での経験をもとに、身体の状態に合った福祉用具選びや介護業界への転職に関する情報を発信している。運営者情報はこちら

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